その船には、しかしながら、まったく人がいないわけではなかった。下宿屋の所有者はミセス・デューク(侯爵夫人)某という女性であったが、運命の女神が戦いをいどむのも虚しくなるような、無気力な連中のひとりであった。彼女は、不幸な出来事がすべて起きるまえでも、起きたあとでも、ぽかんと笑みをうかべた。知恵が足りないところがあるから、彼女は傷つくことがなかった。だが働き者の姪が助けてくれるおかげで-むしろ姪に指示されているおかげで-、まだ少しは残っている常連客が、途切れることなく下宿していた。その大半は若いが、気力に欠ける者たちであった。実際のところ、下宿人は五人で、彼らが庭のあたりに憂鬱そうに立っていると、大風が襲いかかってきて、背後の、端にある塔の土台を引き裂いたが、それは突き出た崖の下の方に、海がぶつかって飛び散る様のようであった。
The ship, however, was not wholly deserted. The proprietor of the boarding-house, a Mrs. Duke, was one of those helpless persons against whom fate wars in vain; she smiled vaguely both before and after all her calamities; she was too soft to be hurt. But by the aid (or rather under the orders) of a strenuous niece she always kept the remains of a clientele, mostly of young but listless folks. And there were actually five inmates standing disconsolately about the garden when the great gale broke at the base of the terminal tower behind them, as the sea bursts against the base of an outstanding cliff.