『注文の多い料理店』
作者:宮沢賢治
初出:1924年
汐文社 文豪ノ怪談ジュニア・セレクション
「風がどうと吹いてきて…」は、東雅夫氏の注によれば「代表作『風の又三郎』をはじめ、宮沢賢治の作品では、突風はしばしば現世と異界のつなぎ役となって、作中を妖しく吹き抜ける」とのこと。
『注文の多い料理店』でも、数えてみたら「風がどうと吹いてきて」は三回繰り返されている。山猫軒に出会うとき、山猫軒の中に靴の泥を落として入るとき、山猫軒が消えるとき、それぞれの場面で「風がどうと吹いてきて」という言葉がはさまれていて、風の音ともに何かを期待している私に気づく…東氏の注を読んでだけれど。
童話でありながら、お金について細かく記しているのは、どんな意図があるのだろうか?二人の紳士は、それぞれの犬が倒れて死んでしまい、片方が「二千四百円の損害だ」と言うと、もう片方は「ぼくは二千八百円の損害だ」と返す。
最後、さんざん怖い思いをした二人は、「途中で十円だけ山鳥を買って東京に帰りました」とあるが。ここで金額を記したのはなぜなのだろうか?二人の紳士の世界と山鳥の住む世界の差に皮肉をこめたのだろうか?わからない。
よく知っていたつもりの童話でも、新しい気づきがいろいろあるものだ…幼い頃からの本でも、何度繰り返し読むことは楽しい。
読了日:2017年10月9日