『緑衣の少女』
作者:佐藤春夫
初出;1922年「現代」7月号
汐文社文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 恋
佐藤春夫が、中国の怪奇小説集「聊斎志異」のなかの『緑衣女』を翻訳した作品。
若者が読書をしていると、若い女性が彼の勉強ぶりをたたえて入ってきて、そのまま泊まっていく。朝になると、どこかへ消えていく。こうしたことを繰り返すうちに、ある朝、少女が嫌な予感がするから曲がり角に自分の姿が消えるまで見送ってくれと頼む。若者が見守っていると、少女の叫び声が聞こえてくる。駆けつけると少女の姿はなく、庇のしたの蜘蛛の巣に青緑色の蜂がかかっている。蜂をすくってあげると、やがて蜂は墨に自分の体をひたし「謝」の文字を書いて立ち去っていく。それから少女が姿をあらわすことはなかった。
あちらこちらに散りばめられた蜂のイメージが印象的。
彼は一目に、その少女が人間の類ではないという予感をもつことができたから
少女の下着は透かして見える絹であった。彼の女がその紐をといた時、彼の女の腰は片一方の掌でまわるほどに細かった。
少女が音や律のことについてよく理解しているのを知った。
最後のほうに近づくと、蜂が姿をかえた少女は、その命が短いことを思わせる文がはいってくる。
私の胸がどきどきする。私の胸が動悸を打つときは私は死ななければならないのです。
原文は「緑衣女」とあるから、少女ではないようだが。でも佐藤春夫のように、少女と訳したほうが、その儚さが印象に残るような気もした。
読了日:2017年10月11日