チェスタトン「マンアライヴ」二部三章第329回

「妻と子供たちの話し声が聞こえたし、部屋を動き回る姿も見えた」彼は続けました。「けれど僕には分かっていた。妻と子供たちが歩き回り、話しているのは、数千マイル離れたところにある別の家で、異なる空の光のもとだということが。そして七つの海のむこうだということを。彼らのことを愛しているよ、熱烈に。遠いところにいるように思えるだけではなく、到達しがたいところにいるように思えるからなんだ。人間がこんなに親しいものに、好ましいものに思えたことがあるだろうか。でも僕ときたら、冷たい幽霊のようなんだ。だから、そうしたつまらない人間と縁を切って宣言したんだ。いや、それだけではない。世界を踏みつけて鼻で笑ったんだよ。すると世界は踏み車のように一回転したではないか」

“`I heard my wife and children talking and saw them moving about the room,’ he continued, `and all the time I knew they were walking and talking in another house thousands of miles away, under the light of different skies, and beyond the series of the seas. I loved them with a devouring love, because they seemed not only distant but unattainable. Never did human creatures seem so dear and so desirable: but I seemed like a cold ghost; therefore I cast off their dust from my feet for a testimony. Nay, I did more. I spurned the world under my feet so that it swung full circle like a treadmill.’

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