サキ「耐えがたきバシントン」Ⅳ章24回

フランチェスカが心の中で、自分の息子と比較してみるのは、まわりで見かける幾百の他の青年であったが、彼らがしっかりと、さらに明らかに幸せそうに没頭しているのは、自分自身を好青年から有益な市民に変えていくことであった。そのほとんどが職業をもっているか、あるいはそうした類のものに自分が向くようにとに熱心に励んでいた。暇なときには、程々の値段の巻きタバコを吸い、ミュージック・ホールの出来るだけ安い席に行き、たまには関心も露わにローズ試合場でクリケットの試合を観戦したり、映写機を媒体にして世界の華々しい出来事を見たりして、別れに際して「元気で」という挨拶を交わすのに慣れていた。ボンドストリートからも、ピカデリー通りから枝分かれした道の多くからも、当世ロンドンの顔が一掃されなかったのは、彼らが毎日の生活に必要とするものがあたえられていたからである。彼らは知人としては退屈であったが、息子としては大いに安らぎをあたえてくれただろう。苛立ちをつのらせながら、フランチェスカはこうした財政の援助を受けるに値する青年と、自分の御し難い息子を比較しては、運命はなぜ自分を選び出して、このいらだたしいまでに心地よさとも望ましさとも無縁の子の親にしたのだろうかと思った。報酬を得るということに関して言えば、コーマスは危険なまでの貞節さをもって、野の百合の無関心さを真似した。母親と同じように、彼も物足りなそうな眼差しで、当世の若者によってもたらされた例を見るのであった。そして彼が注意をむける知人とは、より裕福な層であり、ボタンホールにさすカーネーションを買うくらいの気安さで、車やポロ用のポニーを買い、まるでブライトンでの週末を考えるかのように何の困難もなく、財政上の無理もなく、カイロやチグリス流域へと旅する者たちであった。

 

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