明治花魁日記 「遊女物語」3 大正二年 和田芳子

思へば、私の半生は夢でありました。不幸(ふかう)不思議であた。今日(こんにち)、いよい()とい振り返て、四年有余(ゆうよ)を、と、戦慄(ふる)り、であす。が、であす。()(みずか)しいしいく、()浮世を、しい目、しいであらう、腹立しいであらう。ああ、今日(けふ)しい一刻世界しい生活(せいくわつ)たい人間しい生活(せいくわつ)たいもうもう()事情があ()であれ、(ゆる)ん。女工て、労働も、二度世界帰らうとは、露ばかりも思ひません。萬一(まんいち)決心(ひるが)やうな、場合(ばあひ)出遭(であ)ば、もうはあん。

 さるにても、不思議なる女心よ、苦しんでは泣き、辛くては泣き、涙を隠して、心にもなく笑ひ、思ひの(ほか)ひ、(いつは)(こび)(ささ)浮世を、やう死屍(かばね)よう(きた)里、世界を、て、(おか)も、名残(なごり)であす。対しもあん。朋輩(ほうばい)()もあん。不思議女心よ。

 

 大正二年四月二十日、罪の夢より醒むると()今日(こんにち)(さく)()若芽時、新宿二階て。

                芳子事 和田元子(しる) 当年二十六

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