丸山健二「千日の瑠璃 終結2」一月十日を読む
ー「洗濯物」とやり取りする少年の自由な心ー
一月十日は「私は洗濯物だ」で始まる。
以下引用文。冬の寒さが厳しい信濃大町にずっと住んでいる丸山先生らしい、実体験あふれる描写だと思う。
マイナス6度の風に吹き晒されたことで
がちがちに凍りつき、
却って生々しい形状になってしまった
丘の上の洗濯物だ。
(丸山健二「千日の瑠璃」6ページ)
以下引用文。「洗濯物」と不自由なところのある世一が交わすやり取りである。
互いに相手の特徴を鋭く突きながらも、お互いに負けずに言い返しているところが何ともユーモラスである。そして洗濯物を相手に自由にやり取りする世一の心がひたすら羨ましくなってくる。
ときおり彼は
ごわごわに固まっている私を見ながら
少しは動いたらどうかとという意味のことを言い、
そこで私は
少しはじっとしていたらどうかと言い返し、
病児はなおも食い下がって
動かない奴は死んだ奴だななどと宣い、
こっちも引き下がらずに
動き過ぎる奴も生きているとは言いがたいと
そう決めつけてやった。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」8ページ)