丸山健二『言の葉便り 花便り 北アルプスの山麓から』より「何が面白くて生きるのか」を読む
ー八十歳の作家が語る老いは辛くもあり、癒しもありー
本書の魅力は、八十歳になる丸山先生の心境が率直に丁寧に書かれているところにもあるのかと思う。だいたい男性作家の方は早くに亡くなる方が多い。八十歳の心境をかくも真摯に見つめ書いた男性作家は稀なのではないだろうか。
八十歳になっても「焦燥感」や「不安」や「怯え」から解放されないものか……と生きる辛さを思う。
でも長寿社会ならではの老いに北アルプスの自然を重ね、奥様とオウムのバロン君と共に日々を過ごす生き方には癒されるものがある。
「そう長い寿命を与えられているわけでもないのに、青春時代に覚えたような安っぽい焦燥感に駆られます」11ページ
「一介の凡夫としての私は、生きても生きても悟りの境地とやらに迫ることができず、不安と怯えの数が増すばかりで、救いようがない体たらくです」12ページ
「何が面白くて生きているのか?」とバロン君が毎朝仏頂面で尋ねてきます。 13ページ
丸山健二『言の葉便り 花便り 北アルプスの山麓から』より