丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より三月八日「私は皮肉だ」を読む
破門された僧が、橋の下に住む物乞いの隣に小屋を建てる。そんな僧に向けて物乞いが放つ皮肉が語る。
以下引用文。「皮肉」という目には見えないものが形になって現れてくる不思議さ、滑稽さがある。皮肉を言われているばかりだと救いのない話も、こうした最後を持ってくることで軽やかになる気がする。
ところが
いつしか私は物乞いを相手にしており
当人もそれに気づいて私をあやまち川へ突き落とし、
冷た水に押し流されてゆく私に向かって
世一が橋の上から手を振った。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』97ページ)