丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より三月六日「私は折り紙だ」を読む
「盲目の少女の 常に人肌に触れたがる十本の指から次々に生み出される 神気あふれる」折り紙。
その形に作者が思い描く世界のどこか寂しく、どこか美しい世界が心に残る。
なんでも折り紙にしてしまう少女だが、世一に「少女そのものを折ってくれないか」と頼まれると、「自分を見たことがないから折れない」と言って帰ってしまう。
その言葉に少女の哀しみを思う。
残夜の霜に打たれて死んだ
オールドローズの花を、
場末の映画館の前で
気韻あふれる作品の古いポスターを
しげしげと眺める寄る辺ない身の男を、
まほろ町を死地と定めて
無念無想の境地に浸る
細身の老人を
忠実に折る。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』87ページ)