さりはま書房徒然日誌2025年4月20日

丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より三月六日「私は折り紙だ」を読む

「盲目の少女の 常に人肌に触れたがる十本の指から次々に生み出される 神気あふれる」折り紙。

その形に作者が思い描く世界のどこか寂しく、どこか美しい世界が心に残る。

なんでも折り紙にしてしまう少女だが、世一に「少女そのものを折ってくれないか」と頼まれると、「自分を見たことがないから折れない」と言って帰ってしまう。
その言葉に少女の哀しみを思う。

残夜の霜に打たれて死んだ
   オールドローズの花を、

場末の映画館の前で
   気韻あふれる作品の古いポスターを
      しげしげと眺める寄る辺ない身の男を、

まほろ町を死地と定めて
   無念無想の境地に浸る
      細身の老人を
         忠実に折る。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』87ページ)

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