丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より二月二十七日「私は羨望だ」を読む
「娼婦を娼婦と承知しながら眺める女子高校生たちの熱い眼差し」に込められた「羨望」が語る。
以下引用文。「糖質と性的な夢に目がない」という女子高校生たちが娼婦に抱く羨望。
それでも世一と娼婦の立ち話をする場面では、羨望の念を抱く方にも、抱かれる側にもギトギトしたものがない。
青づくめの世一、シクラメンの赤、娼婦の白……という色に丸山先生が込めたメッセージとは?と考える。そのメッセージに意味があるからこそ、羨望が「淡雪のごとくかき消える」のも、「病児の救いがたい影」が残るのも、心に沁みる現実として刻まれるのではないだろうか。
彼の青がシクラメンの赤をぐっと引き立て
そして彼女のイメージカラーとしての白をさらに映えさせ、
世一と立ち話を交わす彼女は
この私を一段と輝かせ、
彼女が颯爽とした足取りで立ち去るや
私は淡雪のごとくかき消えて
その後には
病児の救いがたい影のみが残される。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』