アーサー・モリスン「ロンドン・タウンへ」1章26回

メイ未亡人は戸棚に手をのばして、ひびの入ったカップをつかみ、コッパー銅貨を二、三枚ころがすと、半クラウン硬貨を一枚とりだした。その硬貨をもって、彼女はアイザックおじさんのところに戻った。

 「このことはメモに残しておくよ」アイザックおじさんは言いながら、ポケットにその金をしまいこんだ。「そのうち郵便為替でおくるから」

 「まあ、そんなことを気にしないで、アイザックおじさん」それというのも、アイザックおじさんには資産が多少なりともあるのだから、半クラウンの問題で不快な思いをさせる必要はないのだ。

 「なんだと? 気にするだと?」彼は思わず声をあげたが、苛立ちが見てとれた。「支払いは、私のー」

 「さあ、行くぞ」バトソン氏が不作法にうなる声が、外の暗闇から聞こえてきた。「さあ、行くぞ」それから彼らは連れだって出ていき、先ほど騒がしい女が進んだ道とは、反対の方向の道にふみだした。

 

Mrs. May reached a cracked cup from a shelf, and, turning over a few coppers, elicited a half-crown. With this she returned to Uncle Isaac.

“I’ll make a note of it,” said Uncle Isaac as he pocketed the money, “and send a postal-order.”

“O, don’t trouble about that, Uncle Isaac!” For Uncle Isaac, with the small property, must not be offended in a matter of a half-crown.

“What? Trouble?” he ejaculated, deeply pained. “To pay my—”

“‘Ere—come on!” growled Mr. Butson savagely from the outer gloom. “Come on!” And they went together, taking the lane in the direction opposite to that lately used by the noisy woman.

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