2017.11 隙間読書 泉鏡花 『星あかり』

『星あかり』

作者:泉鏡花

初出:1898年

12月2日鏡花怪談宴席で朗読される作品ということで読んでみた。

鎌倉のとある寺に宿泊していた「私」は、夜中に宿所をしめだされてしまう。宿所には山科という医学生が寝ているから、起こして開けてもらえばいいのだが、先ほど言い争いをしたから…と「私」は鎌倉の山道をさすらい、海へと出る。

その途中の風景が不安にみちているのが不思議ながら、紀行文のような作品だと思いつつ読んでいくと、最後に「私」が家に戻る場面でこの作品はドッペルゲンガーを題材にした作品であり、「私」と「山科」が同一人物だとわかる。


結末がわかり、もう一度再読してみると、旅先での不安に思えた描写だけれど、星のない空も、なぜか消えていく車も、縮まっている浜も、ドッペルゲンガーから生じた不安のようにも思えてくる。

何時の間にか星は隠れた。鼠色の空はどんよりとして、流るる雲も何にもない。


車も、人も、山道の半あたりでツイ目のさきにあるような、大きな、鮮な形で、ありのまま衝と消えた。


先に来た時分とは浜が著しく縮まって居る

姿を見られてはならない、音をたててはいけない、と思いながら歩く私の気持ちも、犬を怖れる気持ちも、ドッペルゲンガーの「私」の気持ちを巧みにあらわしている。

唯一人、由井ヶ浜へ通ずる砂道を辿ることを、見られてはならぬ、知られてはならぬ、気取られてはならぬというような思であるのに

誰も咎めはせぬのに、抜足、差足、音は立てまいと思うほど、なお下駄の響が胸を打って、耳を貫く。

我ながら、自分を怪むほどであるから、恐ろしく犬を憚ったものである


浜辺の船の船底にたまった水を見て、はっと我にかえる場面は見事だなあと思う。

船底に銀のような水が溜って居るのを見た。思わずあッといって失望した時、轟々轟という波の音。

夢かうつつかで魂がさまよう『星あかり』の朗読が楽しみである。

読了日:2017年11月12日

 

 

 

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