チェスタトン「マンアライヴ」二部三章第307回

「『人形の家』のノラのことですよ」私は答えました。

この言葉にとても驚いた様子でしたので、彼は英国人なのだと思いました。英国人ときたら、ロシア人は勅令のことしか学んでいないと常々思っているものですから。

「人形の家だって?」彼は語気を強めました。「とんでもない。その作品こそが、イプセンの誤謬ではないか! 家の目的とは、人形の家になることにあるのではないか? 覚えていないのか? 子供のころ、人形の家の小さな窓が、どれほど窓らしかったことか。一方、家の大きな窓ときたら窓らしくなかった。子供は人形の家を持っていて、正面の扉が家の中へと開かれると、きゃっと歓声をあげる。銀行家は、ほんとうの家を持っているよ。でも、嫌になるくらい多いんだ。ほんとうの正面玄関が家の内側にむかって開かれても、かすかな吐息ももらさない銀行家が。」

“`I mean Nora in “The Doll’s House,”‘ I replied.

“At this he looked very much astonished, and I knew he was an Englishman; for Englishmen always think that Russians study nothing but `ukases.’

“`”The Doll’s House”?’ he cried vehemently; `why, that is just where Ibsen was so wrong! Why, the whole aim of a house is to be a doll’s house. Don’t you remember, when you were a child, how those little windows WERE windows, while the big windows weren’t. A child has a doll’s house, and shrieks when a front door opens inwards. A banker has a real house, yet how numerous are the bankers who fail to emit the faintest shriek when their real front doors open inwards.’

さりはま の紹介

何かあればsarihama★hotmail.co.jpまでご連絡ください。★は@に変えてください。更新情報はツィッター sarihama_xx で。
カテゴリー: チェスタトンの部屋, マンアライヴ パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Time limit is exhausted. Please reload the CAPTCHA.