アメリア・B・エドワーズ「あれは幻影だったのか、それとも……? ある司祭の報告」No.11

「見なかったのか?」わたしは訊いた。

彼はうなずいた。

「わたしは、わたしは、何も見ていません」彼はおずおずと答えた。「なにか見たのですか?」

彼の唇は血の気がひいて白くなっていた。ようやく立っているように見えた。

「そんな、君も見たはずだ!」わたしは声をはりあげた。「そこに映っていたじゃないか? ツタがはえているあの壁に。だれか男の子が隠れているにちがいない。あれは少年の影だった。まちがいない」

「少年の影!」彼はその言葉をくりかえすと、落ち着きを失い、怯えた様子であたりを見まわした。「そんな場所はないはず。少年が、身を隠すような場所は」

「場所があろうと、なかろうと関係ない」わたしは怒りをこめて言った。「もしその少年を見つけたら、その子の肩に感じさせてやろう、わたしの杖の重みを」

 後のほうを、それから前の方を、わたしはあらゆる方向を探してみた。校長は顔には恐怖をうかべ、足をひきずりながら、わたしについてきた。地面は凸凹していて平らでなかったけれど、うさぎ一匹といえども隠れることのできるほどの大きさの穴はなかった。

「では、あれは何だったのだ?」わたしは苛々しながらいった。

「おそらく……おそらく幻影でしょうよ。お言葉をかえすようですが、サー。幻影をご覧になったのですよ」

 彼は打ちのめされた猟犬のように、心底怯え、媚びへつらって見えたる有様なので、先ほど仄めかした杖で、彼の肩を叩くことができれば、わたしはきっと満足を感じたことだろう。

「だが、君は見たんだろう?」わたしはふたたび訊いた。

「いいえ、サー。名誉にかけて申し上げますが、わたしは見ていません、サー。なにも見ていません。何であろうと、なにも見ていません」

彼の表情から、その言葉が嘘であることが見てとれた。彼は影を見ただけにとどまらず、話したことよりも多くを知っているにちがいない。わたしの怒りは、そのときには頂点に達していた。少年の悪戯相手にされるのも、校長にごまかされるのにもうんざりだ。そういう態度は、わたしを侮辱することでもあり、わたしの協会を侮辱することでもある。

‘Did you not see it?’ I asked.

He shook his head.

‘I-I saw nothing,’ he said, faintly. ‘What was it?’

His lips were white. He seemed scarcely able to stand.

‘But you must have seen it!’ I exclaimed. ‘It fell just there-where that bit of ivy grows. There must be some boy hiding-it was a boy’s shadow, I am confident.’

‘A boy’s shadow!’ he echoed, looking round in a wild, frightened way. ‘There is no place-for a boy-to hide.’

‘Place or no place,’ I said, angrily, ‘if I catch him, he shall feel the weight of my cane!’

I searched backwards and forwards in event direction, the schoolmaster, with his scared face, limping at my heels; but, rough and irregular as the ground was, there was not a hole in it big enough to shelter a rabbit.

‘But what was it?’ I said, impatiently.

‘An-an illusion. Begging your pardon, sir-an illusion.’

He looked so like a beaten hound, so frightened, so fawning, that I felt I could with lively satisfaction have transferred the threatened caning to his own shoulders.

‘But you saw it?’ I said again.

‘No, sir. Upon my honour, no, sir. I saw nothing-nothing whatever.’

His looks belied his words. I felt positive that he had not only seen the shadow, but that he knew more about it than he chose to tell. I was by this time really angry. To be made the object of a boyish trick, and to be hoodwinked by the connivance of the schoolmaster, was too much. It was an insult to myself and my office.


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