さりはま書房徒然日誌2023年9月13日(水)

1969年11月3日、三島由紀夫が国立劇場屋上で楯の会のパレード行進を挙行。
そのときに小劇場で上演されていた文楽の演目は?


今日は国立劇場で文楽1部、2部を鑑賞。
今月で建て替えのため、この劇場は長い歴史をいったん閉じる。


劇場が建てられて間もない頃、三島由紀夫が国立劇場の屋上で楯の会結成一周年記念のパレード行進をした……という話を聞いたことがある。
いくら三島由紀夫とはいえ、よくぞ国立劇場が屋上を解放したものだ……と思っていた……。

だが、やはり許可をもらって……という形ではなかったようである。

パレードを行った1969年当時、三島由紀夫は国立劇場の非常勤理事をしていた。
さらに三島が書いた『椿説弓張月』を国立劇場で11月5日から上演することになっていた。
当然のことながら、三島は足繁く国立劇場に通っていた。


1969年5月には、国立劇場の技官に頼んで3階の屋上に通じる鍵を開けてもらい、歩いて時間をかけて屋上の広さやらを測って下見をしていたらしい。
1969年11月3日、三島は2日後に上演を控えていた自作『椿説弓張月』の舞台稽古に立ち会っていた。

だが途中で「あとはよろしく」と姿を消した。

そしてその日15時、三島は楯の会会員80人、来賓50人を連れて国立劇場3階から屋上に通じる人一人がやっと通れる階段を登ってパレードを挙行……したのだそうだ。
大劇場は、三島の『椿説弓張月』の舞台稽古中であった。


ちなみに小劇場の方は……
文春オンライン記事によれば「上演中だった下の小劇場では、照明器具を吊るす細長いバトンが揺れて、ライトの当たりが狂って大変だったそうです」とのこと。


この日、小劇場で上演中の演目は?と調べてみると、文楽「本朝廿四孝」が大序から道三最後までフルに通しで上演されていた。
今の演者の方で、三島が屋上でパレードしていたときに舞台に出ていた方は?と調べてみたら、和生さん、清治さん、呂太夫さん、団七さんは出演されていたようである。

今月、幕を閉じる国立劇場。
その長い歴史の中で、こんな出来事もあったのか……。

舞台では「本朝廿四孝」の狐火が縦横無尽に踊り、屋上では軍服を着こんだ縦の会会員が整列歩行をする……。
そのとき国立劇場の建物は、どんな思いで相矛盾する人間界を眺めていたのだろう?

国立劇場の長い歴史を思いつつ……

三島がパレードをするその下で舞台に出ていらした演者の方々が、今日も元気に舞台をつとめている文楽のパワーというものに驚嘆する次第である。

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