丸山健二「千日の瑠璃 終結1」を読む
ー漢字が多いのも意図があるのでは?ー
十一月十一日は「私は紋章だ」で始まる。
まほろ町に進出した「死んで元々だという見え見えの虚勢に色付けされた覚悟」を「黒い三階建てのビルに飾った」紋章が語る。何の「紋章」かは最後まで具体的に明かすことはないが、はっきりとどういう人たちであるのかが分かってくる書き方である。
この箇所は随分と漢字が多いのが印象的だった。紋章の金属感、普通の人を拒絶する雰囲気を漢字で表現しようとしているのだろうか。以下引用文もそうである。
正面切って世間に逆らい
表社会を足蹴にし
法律に真っ向から楯突く証である私は
無難な日常を拒絶して
常識や良識からおよそ掛け離れて生きざまを
殊更強調して見せつける
(丸山健二「千にちの瑠璃 終結1)166頁
以下引用文。悪のシンボルである紋章の光を撥ね返せるのは世一だけ……という描き方が、不自由なところのある世一の強さを表現していて心に残った。
因みに
私が撥ね返す陽光をさらに撥ね返すことができるのは
今のところ
取り憑かれた難病を逆手に取って真骨頂を発揮する少年のみだ。
(丸山健二「千にちの瑠璃 終結1)169頁