丸山健二「千日の瑠璃 終結2」三月五日を読む
ー「瑠璃色の才能」とはー
三月五日は「私は春一番だ」で始まる。まほろ町に吹き始めた春一番が語る。
以下引用文。「雪の白に幽閉されて」という部分と「生来の瑠璃色の才能が徐々に開花してゆく」という部分、コントラストの鮮やかさが心に残る。細々としたことは語らずして、色が与えるイメージだけで物語ってゆくような箇所である。「生来の瑠璃色の才能」ってどんな才能なのだろう……と思わず立ち止まって考えたくなる。
雪の白に幽閉されて
魂を縮こめているしかなかった少年世一の
意味も目的もなしに
淡々と命を長らえさせるという
重い病と引き換えに付与された
生来の瑠璃色の才能が
徐々に開花してゆく。