丸山健二「千日の瑠璃 終結2」を読む
ー「髪」が語ればー
三月四日は「私は髪だ」で始まる。
以下引用文。「四十三年間生きてきた」女の髪が語る。まるで竹下夢二が描く女を思わせる描写でありながら、作者が「女」のことを語るのでなく、「女の髪」が「女」を語ることで変な生々しさは消え、女の生命力が歌うように書かれているような気がした。
それでも私は
山間を流れる小川のように
どこまでもしなやかで、
彼女のすっと気持ちよく伸びた華奢な首にも
逃げ水のごとく儚い感じのうなじにも
よく似合っており、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結2」218頁)