さりはま書房徒然日誌2024年7月25日(木)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』五月二十八日を読む

ーシビアな語りも「地力」が語れば穏やかに聞こえてくるー

五月二十八日は「私は地力だ」で始まる。「土中に含まれる酵素も酸素も飽和狀態に達し 水分も程良く保たれ」た地力とは、作庭にこだわる丸山先生らしい表現だと思いつつ読む。

以下引用文。そんな地力のある土がありながら、世一の父親はかつて夢中だった家庭菜園はもちろん、花の種すら播こうとしない。
そんな父親の人生を「地力」は以下引用文のように分析する。よくある人間像だが、もし「地力」でなく作者自身が語る形をとれば、あまりの辛辣さに耐えられなくなってしまうかもしれない。「地力」だからこそ、シビアな声もどこか遠くから響いてくるような気がする。

日ごとに老いている彼のその目には
   すでに夢のかけらさえ宿っておらず、

   貫き通すほどの素志も
      遂げなくてはならぬ本望も
         これといった趣味も持たなかった男は、

         この分だと
            晩年を根拠なき失意のうちに送る羽目になるやもしれない。

ほかの人々と同様
   本来はあらゆる可能性を秘めていたはずなのに
      いつしか地方公務員の枠内にちんまりと納まり返ってしまい、

      希望の目を育てることを放棄して
         あたらべんべんと
            徒に時をやり過ごし、



(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』160ページ)


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