丸山健二『千日の瑠璃 終結3』五月二十九日
ー詩情とは縁遠い存在が詩情を帯びてくるー
五月二十九日は「私はネオンサインだ」で始まる。
以下引用文。こういう詩的とは言い難いものに語らせる……というところが好きである。
まほろ町では最も古く
最も毒々しい色合いの光を単調な間合いで点滅させている
パチンコ店のネオンサインだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』162ページ)
以下引用文。パチンコ店の主人はヤクザ者にからまれつつも、きっぱりとはねのける。主人とヤクザ者のやり取りが、ネオンサインの模様に反映されているような書き方も面白い。
また詩情に欠けているかに思えたネオンサインが最後「青い鳥そっくりに」という展開も意外で心に残る。
すると私は
どんどん赤色を失ってゆき
ついには青い鳥そっくりになった。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』165ページ)