さりはま書房徒然日誌2024年7月26日(金)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』五月二十九日

ー詩情とは縁遠い存在が詩情を帯びてくるー

五月二十九日は「私はネオンサインだ」で始まる。
以下引用文。こういう詩的とは言い難いものに語らせる……というところが好きである。

まほろ町では最も古く
   最も毒々しい色合いの光を単調な間合いで点滅させている
      パチンコ店のネオンサインだ。

(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』162ページ)

以下引用文。パチンコ店の主人はヤクザ者にからまれつつも、きっぱりとはねのける。主人とヤクザ者のやり取りが、ネオンサインの模様に反映されているような書き方も面白い。
また詩情に欠けているかに思えたネオンサインが最後「青い鳥そっくりに」という展開も意外で心に残る。

すると私は
   どんどん赤色を失ってゆき
      ついには青い鳥そっくりになった。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』165ページ)

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