さりはま書房徒然日誌2024年8月10日(土)

丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月十五日を読む

ー選別される鯉に人間を重ねてー

六月十五日は「私は稚魚だ」で始まる。錦鯉の稚魚が世一の叔父と世一を語る。

以下引用文。

稚魚の選別をする男もまた「社会や国家によって 実にむごたらしい選別を受けてきた」という視点の冷徹さ。その見方を支えるような「魂はすでに絶命しているのかも」という情け容赦ない言葉に、自分のことを言われているようでグサリとくる。

そんな叔父とは対照的な世一の「生者の中の生者」という言葉に救われるようで、ふと考えさせられるものがある。

思うに
   見る影もない姿の彼自身もまた
      これまで幾度となく
         社会や国家によって
            実にむごたらしい選別を受けてきた。

彼はまだ死んでおらず
   ともあれ生きてはいても
      その魂はすでにして絶命しているのかもしれず、

しかしそんな叔父を訪ねてきた甥はというと
   判断の基準が非常に難しく
      ひょっとすると
         生者のなかの生者であるのかもしれないのだ。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』233頁)
   

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