丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月十八日を読む
ー二つの色に込められた思いー
六月十八日は「私は梅雨だ」で始まる。
以下引用文。土蔵にこもって暮らす青年が雨の動きを真似して踊り始め、体の不自由な少年・世一も一緒に踊りだす。
「銀色」「瑠璃色」という二つの色に、青年と世一が象徴されるようで、その心やこれまでが鮮やかに浮かんでくる。
「愉悦の流れに乗せ」「虚無を吹き飛ばして」「秩序整然たる宇宙に穴をあけ」「世界は果てしない苦悶の連鎖であるという説を押しこんでしまい」という言葉を読んでいると、自分の狭い基準とは違うところで回転しているこの世の歌が聞こえてくるように思えてくる。
〈雨〉を踊る彼の魂は銀色に染まり
あとからやってきて参加した病児の
踊りと呼ぶには壮絶に過ぎる踊りは
瑠璃色に輝いて私を愉悦の流れに乗せ
大地に充満する虚無を吹き飛ばして
この世との同化作用を促進させる。
若者と少年の自由奔放な踊りは
どこまでも生命的な神々を彷彿とさせて
秩序整然たる宇宙に穴をあけ
世界は果てしない苦悶の連鎖であるという説を押しこんでしまい、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』245頁)