丸山健二『千日の瑠璃 終結3』六月二十一日を読む
ー難しい言葉だけでない魅力ー
六月二十一日は「私は麦だ」と国に「米はもう充分だ これ以上作っても腐らせてしまうだけだ」と言われて「やむなく育てられた麦」が語る。
以下引用文。
麦の上に身を横たえた世一と麦の間に交わされる会話。
どこか童話めいたやり取りが心に残る。
世間から「難しい、難しい」と思われがちな丸山先生の作品ではあるが、こうした大人のための童話とも言えるやり取りに魅力の一つがあるように思う。決して難しい言葉ばかりではないのでは?
異様なまでに研ぎ澄まされた感性を
そっくりそのまま委ね、
湖の力を借りて
米ではないおのれを恥じよと言い、
それに対して
猿ではないおのれを恥じよと
そう言い返す。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』257頁)