丸山健二『千日の瑠璃 終結3』七月十四日を読む
ー「魂に汗して生きる」という表現、心に残るー
七月十四日は「私は積乱雲だ」で始まる。まほろ町のいろんな住民を観察し見守る積乱雲は、丸山先生そのもののような気がする。積乱雲が語る世一の「魂に汗して生きる」「最高にして最低の存在」の姿も、清々しいような、哀しいような存在である。人の世を見つめる積乱雲の束の間の存在が心に残る。
そして
この世を見極めることにかけては
今や入神の域に達しつつあるかもしれぬ
魂に汗して生きつづける
最高にして最低の存在たる
少年世一。
私はそんなかれらのひとりひとりに
じっくりと見入り
そして魅入っており、
なぜならば
全員にそれだけの存在価値が
充分過ぎるほど具わっているからで、
かれらを認め
かれらの至高至純の魂の震動によって膨張しながら
いつもの夏を
いつもの現世を構成してゆく。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』349頁)