丸山健二『千日の瑠璃 終結3』七月二十三日を読む
ー世一への思いー
七月二十三日は「私は記事だ」で始まる。まほろ町に数十年ぶりに発生した殺人事件の記事が語る。
組員と一緒に記事の写真に写り込んでいた世一をこう語る。「反社会的な存在」「存在することの恐怖」「社会通念を愚弄」という言葉に、丸山先生が世一に託した想いを感じる。
意図せずして、そういう存在になり得る世一は丸山先生にとって理想的な存在なのかもしれない。
それにしてもたまたま写された少年は
当事者である組員本人よりも
なぜかは知らぬが
反社会的な存在に成り得て
存在することの恐怖を物語り、
少なくともこの私にはそう思えてならず
要するに彼は
不自由な肢体のすべてを用いて
社会通念を愚弄している。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』385頁)