丸山健二『千日の瑠璃 終結3』七月二十四日を読む
ー目の見えない少女に天の川を説明するとー
七月二十四日は「私は天の川だ」で始まる。うたかた湖のボートの上で、父親が盲目の娘に「天の川」を説明しようとしている。
以下引用文。「天の川」が自ら語る自分の姿である。醜いもの、清らかなもののコントラストが印象的な文である。
倦怠のまほろ町の爛れた夜空を横切り
けっして世を厭うことのない盲目の少女の
いつも静かな胸のうちをよぎる
幻想としての天の川だ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』386頁)
以下引用文。盲目の娘に天の川とはどんなものか……と必死に説明する父親、それに対する少女の反応である。自分が父親の立場ならどう説明するだろうと考えてしまった。宇宙の底知れぬ怖さを語らないのは父親の思いやりなのだろうか。
星とはつまり
天に咲く花のようなものだと
そう説明し、
すると少女は
いい匂いがして
ふんわりしたものが流れている
大きな川なのかと訊き返す。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結3』387頁)