丸山健二『千日の瑠璃 終結4』八月十八日を読む
ー世一の目がとらえるこの世ー
八月十八日は「私は洞察だ」で始まる。少年世一の「意識下に潜むあまりに鋭い洞察」が語る。
以下引用文。世一の洞察が語る「まほろ町」は平易な言葉でありながら、どこか寓意的でもある。
私に言わせると
閉じた社会でもなければ
開かれた社会でもなく、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』86頁)
以下引用文。世一の意識下の洞察は、まほろ町に住む人々も次々ととらえていく。その姿は「青や赤や紫の思想」という言葉のように、説明する言葉を失いながら的確に核心をついている。
理解する言葉を持たない世一の視点に降りたって、この世を眺める不思議さがある。
そうかと思うと
青や赤や紫の思想を漂白して
舌戦をくり広げたがる連中もいるし、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』86頁)