丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月六日を読む
ー行商の娘がざらっとした印象を残すー
九月六日は「私は無視だ」で始まる。
おそらくこの少女は、丸山先生が実際に見かけた娘なのでは?日本海の街からはるばる信濃大町まで大糸線に乗って行商に来た娘がいるのでは?とも思う。
列車やバスを乗り継いで
はるばる海の町から行商にやってきた娘
そんな健気な彼女の
少年世一に対する無視だ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』162ページ)
以下引用文。世一の家のある丘で弁当を食べ、世一がお茶を出しても頑なに無視をする娘。オオルリが「感謝の言葉はどうした」と促しても、やはり無視を続ける。そんな娘が呟く「あんたは飛べない鳥だね」というのはオオルリなのだろうか、世一なのだろうか……いずれにしても心に残る言葉、娘である。
さっさと弁当を食べ終えた彼女は
どこか遠くを
山の彼方や
空の彼方に目をやりながら
お茶で口をすすぎ、
「あんたは飛べない鳥だね」と
意味深長な言葉を呟いた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』165ページ)