さりはま書房徒然日誌2024年10月11日(金)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月十二日を読む

ー楽器の音色が語りかけてきそうー

九月十二日は「私は楽器だ」で始まる。薪ストーブ作りの男が久しぶりに手にした「金属製のリード楽器」が語る。

以下引用文。楽器の奏でる音が聞こえてくるような気がするのは「滑り」「吸いこまれ」「諭し」というサ行音の効果だろうか、それとも「吸いこまれ」「失いつづけ」と平仮名の量が多いせいなのだろうか?楽器の音が流れてゆく風景、その音に託した楽器の、丸山先生の声が聞こえてきて印象に残る。

十数年ぶりに私が発する震動は
   夜気を震わせて湖面を滑り
      星夜へと吸いこまれ
         奏者自身の胸のうちへと逆流し、

あれから何を失ったのかをやんわりと諭し
   今なお失いつづけて
      このままでは芯から腐ってしまうことを
         厳しく指摘して警告を与えてやった。


(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』189ページ)

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