丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月二十一日を読む
ー藍染だからこその力強さー
九月二十一日は「私は藍だ」で始まる。手織りの布を藍で染め、寝たきりの夫を介護する老婆の染める藍が語る。
以下引用文。老婆は世一を呼び止め、身体を測る。そしてしばらくしてから……が以下の展開である。今まで世の謗りを受けてヨレヨレになったシャツ、老婆が仕立てた藍染のシャツとのコントラストが心に残る。「初秋の空に溶けて 別格の存在に」と語られる世一も……。そうした言葉にこもる思いの強さも丸山先生らしいなあと思う。
汗や土埃
差別や偏見
嫌悪や憎悪
憂いや憤り
そんなものにまみれてよれよれになった半袖のシャツを手に、
私が全情熱を傾けて染めた
真新しい長袖のシャツを着こんで
丘の家へとつづく道をてくてく歩いて登る
必ずしも儚い命とは言えぬ少年は
たちまちにして初秋の空に溶けて
別格の存在と化した。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』225ページ)