丸山健二『千日の瑠璃 終結4』九月十六日を読む
ー宇宙は無数にー
九月十六日は「私は体積だ」で始まり、世一の体の体積が語る。
以下引用文。丸山先生らしい「宇宙は無数に存在」するという考えが出ている箇所で興味深い。だんだんイメージが追いつかなくなったところで、ホウセンカの種が出てきて、なみみ深いこの世に帰ってくる感じがある。
こうした宇宙は無数に存在して
さながら水泡のごとく
ひっきりなしに消えたり現れたりしているのだから
少しも貴重ではなく、
つまり
永遠の存在もなければ
永遠の無もなく、
無は自身のあまりの空しさに耐えきれずに
のべつ揺らぎ、
その揺らぎが限界に達したところで
特異点と化し、
そこから新しい世界の種が
ホウセンカの種のように
ポンと飛び出すのだ。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』204頁)