さりはま書房徒然日誌2024年11月30日(土)

見台の敵を知る

根津美術館で開催された浄瑠璃「傾城阿波鳴門 順礼歌の段」を聞きに行く。太夫は呂勢太夫さん、三味線は藤蔵さんである。

この企画は、阿波徳島藩主・蜂須賀家に伝来した重要文化財「百草蒔絵薬箪笥」の展示に合わせたもの。ぜひ徳島ゆかりの浄瑠璃を美術館で!と文楽好きの学芸員さんが願い、実現したとか。ありがたい限りである。


浄瑠璃の前に呂勢太夫さんのお話が20分ほどある。呂勢太夫さんは、若太夫襲名のときの口上も鮮やかであったが、本当にこういうトークも軽妙洒脱、ユーモアと博学の混ざった語りが楽しい。


色々印象に残る話をしてくださったが、そのなかでも特に記憶に残ったことをひとつ。

それは漆で塗られた見台は乾燥に弱い、ということ。劇場は乾燥しているので、見台が一日でひび割れたりすることもあるとか。そんなに乾燥しているとは!意外であった。

見台がそれほど傷むなら、人形のお肌や髪もダメージを受けるのでは?などと思ったりもした。新しくなる筈の国立劇場が、太夫さんが見台へのダメージを心配することなく置いておけるような劇場になれば、とも思ったりした一日であった。

↑呂勢太夫さんの今日の見台。見台の漆細工は客席からよく見えるようにデザインされたものが多く、根津美術館に展示されているような近くで眺める漆細工とは趣が違うそうだ。

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