さりはま書房徒然日誌2024年12月2日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結4』より十一月四日「私は徘徊だ」を読む

十一月四日は「私は徘徊だ」と「子どものいない夫婦によって ペットとして飼われているホルスタイン種の牛が ふと思いついて深夜に試みた」徘徊が語る。
丸山先生をどこか思わせる夫妻である。牛は飼ったことはないと思うが、大型犬を飼われていたとき、こんな脱走劇があったのでは……と想像してしまう。
以下引用文。そんな脱走を試みるペットの心情に、自分の理想とする生き方とのギャップを重ねた文が心に残る。
そういう満ち足りた環境から脱出したい……と思う心から、まず言葉が、文学の芽が生まれてくるものなのかもしれない。

何不自由ない暮らしと
   惜しげもなく注がれる慈愛に
      押し潰されるのではないかと危惧した牛は
         降り注ぐ青々とした月光に刺激されて悶々とし

(丸山健二『千日の瑠璃 終結4』398ページ)

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