丸山健二『千日の瑠璃 終結5』より一月二十五日「私は灯台だ」を読む
一月二十五日は「私は灯台だ」と、海辺の漁村から行商に来た娘が世一に説明する灯台が語る。
丸山作品には、灯台がよく出てくる。いつかオンラインサロンで、丸山先生自身も灯台に憧れがあるようなことも、灯台さながらご自宅の部屋から庭の暗がりを懐中電灯で照らしてみたりするようなことを語られていた記憶がある。
灯台の魅力は、以下引用文にあるように遠ざかる娘の胸のうちまでそっと照らす……そんな控えめな光も、魅力の一つなのかもしれない。
海を眺めながら遠くに光を投げかける……そんな灯台に憧れる丸山先生の心が少し分かる気がする。
丘の家に戻った世一は
二階の窓から懐中電灯を突き出して
ゆっくりと回転させ、
頼りなくもまほろ町の隅々まで届くその光に便乗して
私は丘を離れ、
バスに揺られて海辺のわが家へと帰って行く娘の
清らかな胸のうちをそっと照らし、
持ち前の明るさで苦境を乗り切ってきた彼女は
首をねじ曲げて
いつまでもその小さな光の点を見つめている。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結5』328ページ)
