丸山健二『千日の瑠璃 終結6』より三月二十七日「私は口答えだ」を読む
「年がら年じゅう決まった時間に就寝させられている双子の兄妹が 生まれて初めて試みる」口答えが語る。
以下引用文。親に抗い、好きな時間に就寝するという小さな自由を手にした兄弟。
そして、すでにその自由の中に生きている少年世一。
就寝という小さなことながら、生きていく上で欠かせない営みさえ、あまり好きでもない仕事や学校にあわせている……ということにハッとする。
今夜を境にして
兄弟は急成長を遂げ
両親はその分だけ老けこんだ。
寝たいときに寝て起きたいときに起きる少年世一の口笛を
勉強部屋で聞く少年は
かくして自由への幸福に一歩近づいたことになる。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結6』173ページ)