丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月八日「私は展望だ」を読む
かつてブラジル移民として活躍した男。
父の死後、何かを志すこともなくなって物乞いになった男。
そんな男が世一の家に物乞いにやってっくる。
オオルリは厳しい。
世一の「弁当をかっきり半分」というところがいじましい。
「二人」じゃなくて「ふたり」と表記すると、姿が浮かんでくる感がある。なぜだろう?
オオルリが二階の窓辺で
「そんな奴に何も恵んでやるな」と鳴き
「飢え死にがお似合いだ」とさえずり、
それでも少年世一は
自分の弁当をかっきり半分与え、
崖っぷちに並んで座ったふたりは
私を前にして
必ずしも生きるためだけではない
さりとて明日のためでもない
険しい昼食を始めた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』65ページ)