丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月十日「私は確執だ」を読む
神木にドリルで穴をあけては放尿を繰り返す世一。
その世一にどう対処すべきか口論をする神官親子に、突然生じた確執が語る。
「濃い闇を引き連れて訪れた」世一は、だんだんこの世の存在を超えた不思議さが増している。
それにしても矢を放ったのは父親なのか、息子なのか……書かれていないだけに色々想像できる楽しさがある。
小説家は懇切丁寧に説明する人が多いけれど、こんなふうに黙して読者を楽しませる、俳画みたいな書き方もあってよいように思う。
私はそのままあまびこ神社に居座り
夜になっても居つづけ、
そして濃い闇を引き連れて訪れた少年が
いざ手回しドリルを構えたとき
弦音高く放たれた矢が神木にぐさりと突き刺さってぶるぶると震え、
されど
世一自身はそのときに限って震えを止めた。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』73ページ)