さりはま書房徒然日誌2025年9月8日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より六月十一日「私はくしゃみだ」を読む

鉄塔のてっぺんで働く男がスギ花粉のせいでした「くしゃみ」。
そのくしゃみに知らないうちに良い影響を受け、次々と変化していく人々

いろんな人々がそれぞれ変わっていく有様が、どこか映画の一場面を観ているようでもある。

まさにくしゃみの瞬間、という感じに映像が浮かんでくるのは何故だろうか、とも不思議に思う。

他愛もないことでふくれっ面をする
   気のいい娘には
      感じのいい笑みを授ける。

それから私は
   何はともあれ
      きのうに引きつづいてきょうもまた
         コンニャクのごとく全身を震わせて生きるしかない

            かの少年の背筋を
ほんの一瞬だけ
                  しゃきっとさせ、

あしたのための活力を
   その不満足な五体の隅々まで
      素早く送り届ける。

( 丸山健二『千日の瑠璃 終結7』77ページ)

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