丸山健二『千日の瑠璃 終結7』より八月二十五日「私は街灯だ」を読む
リゾート開発を進めようとする連中に緋鯉を毒殺された復讐をしようとする世一の叔父。
その心の移り変わりが街灯に照らされた姿、背中の緋鯉の描写から迫ってくる。
以下引用文。なんとも怖そうで、恨みが積もっている様子がひしひしと伝わってくる。
作業用の雨合羽を鈍く光らせ
腰間に挟まれた白鞘の刀をくっきりと闇に浮かび上がらせた私は
彼が晴らそうとしている積怨の一から十までを暴き出し
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』374ページ)
待ち伏せる男の胸のうちをいっぱいに占めた
毒殺された錦鯉の累々たる死骸が
怨恨と憤怒の悪臭を放ち、
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』376ページ)
以下引用文。男の気持ちの一瞬の変化を、背中の緋鯉に託して語っている。
分かりやすく説明されるより、そういうふうに語られる方があれこれ想像して心に残る。
その想像が、最後「電柱」に喩えられた男の姿で一気に膨らむ気がする。
そのとき
電柱の陰に隠れている男の背中で緋鯉が勢いよく跳ねたかと思うと
彼の右手がすっと動いて
私が放つ弱い光を十倍にも輝かせ、
気づいたときにはもう
ほっそりとした危ない代物が
雨のなかへ引き出され、
そんな切迫の最中に登場した少年世一を
私が照らすと
緋鯉は平板な彫り物と化し
長い刃物は杖と化して
男は電柱の一部と化す。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結7』377ページ)