丸山健二「千日の瑠璃 終結7」より八月二十九日「私はモズだ」を読む
籠の外からモズが世一が飼うオオルリを眺める。
オオルリとモズの姿をじっと眺めて描いているようでいながら、鳥に人の世を反映させて思索する文。
そもそも私にはオオルリとモズの区別もよくついていないし、鳥の姿に人の世を被せて考えるなんてしないなあと反省した。
私は春先からずっとオオカエデの枝に止まって
この美しすぎる姿の青い鳥の
これまた美し過ぎる鳴き声を学び取ろうとし、
これまで九十九種類の鳥のさえずりを習得してきた私の
まさに最後の目標はいうと
オオルリにほかならず、
(丸山健二「千日の瑠璃 終結7」391ページ)
ところが
籠のなかだけが勢力範囲のこのオオルリときたら
私の口真似にはいっさい動じず、
しかも
確かに似てはいても
哲学的な響きの欠落だけはいかんともしがたいなどと
皮肉混じりの厳しい揶揄を投げかけてきた。
(丸山健二「千日の瑠璃 終結7」392ページ)
残念ながらそいつは少しも慌てず
檻の真ん中でじっとして
たまには自分の声で鳴いたらどうだとからかい、
そのひと言で我に返った私は初めて恥というものを知り
((丸山健二「千日の瑠璃 終結7」393ページ)