丸山健二『千日の瑠璃 終結8』十月十七日「私は音波だ」を読む
『千日の瑠璃』は長編小説だけれど、一日一日の話のテーマも、表現も考えさせられることが多く、行きつ戻りつしながら過ごせる稀な作品。
なので前後したりすることもあるかもしれない。
十月十七日は、少年世一の耳に届く様々な音波が語る。
開発に浮かれだつまほろ町の人々の声。
周囲の街の羨望の声。
うたかた湖の寂しいボートの物音。
以下引用文。
大切な相棒であるオオルリを失ってしまった世一の姿は、今後の展開を暗示しているようでもあり、作者の心を暗示しているようでもある。
そんな私は
次第に世一を追い詰めてゆき、
だが彼は
もはや生きることにさほど執着しておらず、
郷土が発するすべての情報に聞き飽きて
近頃では葉陰に身を潜める虫たちの立場を羨む始末で、
そこで今度は
墓前に哭する者の声を送り届けてやる。
(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』189ページ)