さりはま書房徒然日誌2026年8月17日(月)

丸山健二『千日の瑠璃 終結8』より十月十九日「私は食堂だ」を読む

娼婦が世一を連れて入った戦前からつづく古い食堂。

娼婦の気だるげな雰囲気も、

街の灰色がかった感じも、

食堂の時に侵食された感じも、

世一の体の動きも見えるような文だなあと思った。

店の前の通りを行き交う
   いささかだれ気味の人々や
      譲歩を知らぬクルマの群れをぼんやりと眺め、

明日なき今のなかでゆったりとくつろぎ
    刹那の流れに思考を委ねている。

汚れが限界に達して久しい厨房では
   壊れかけている油まみれの換気扇が
      世一の体の動きに調子を合わせるようにして
         がくがくと周り

レジの下では
   まるまると太った猫が投げやりな目をして
      めっぽうだらしない格好で寝そべり


(丸山健二『千日の瑠璃 終結8』196ページ)

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