アルフレッド・マーシャル 経済学原理5ページ

 正常な行為と異常なものとして一時的に無視される行為のあいだには、明確な区別がない。同じように正常価格と現在価格、あるいは市場価値、臨時価値のあいだにも明確な区別はない。後者の現在価値、市場価値、臨時価値とは、そのときにおける出来事からいちじるしい影響をうける価値である。一方で、正常価格とは最終的には達成される筈のものであるが、それは目の前に示された経済状況がみずからの影響にさまたげられることなく、作用する時間がある場合である。しかし、この二つのあいだには克服できない隔たりはない。そうした価値は、継続したグラデーションになる。生産物の交換について刻一刻と変わりつつある変化について考えるなら、正常だと考える価格も、その年の出来事に関連した現在の変化を指し示しているだけなのである。更にその年の出来事に関連した正常価格は、その世紀に関連した現在価値でしかない。その時代を構成する要素があらゆる経済問題の中心にくるが、その要素自体も継続しているものだからである。自然界では、時を長期間に分割したり、短期間に分割したりすることは完全にはできない。しかし、わずかなグラデーションをえがきながら片方から片方へと移り変わっていく。ある問題にとって期間が短くても、別の問題にとっては期間が長いということになる。(さりはま訳

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