アルフレッド・マーシャル 経済学原理 1.Ⅱ.13

次に考慮しなくてはいけないことがある。貧乏人の場合は金持ちとは違って、強い動機がなければ、品物についた値段を支払う気になれないということである。1シリングで測ることのできる喜びにしても、満足にしても、貧乏人より金持ちのほうが少ない。金持ちが葉巻1本に1シリングを使おうかと迷うときの喜びと、貧乏人が1か月かけて吸うことになるタバコの支給に1シリングを使おうかと迷うときの喜びと比べてみると、金持ちが感じる喜びは小さい。年収300ポンドの事務員と比べ、年収100ポンドの事務員のほうが、激しい雨の中でも歩いて仕事にいくことだろう。金持ちと違って貧乏人には、路面電車に乗ったり、乗合自動車に乗ったりするのにかかる費用の節約がより大きな節約にみえるからである。もし貧乏なひとがお金を使い、後になってからお金が足りなくなると、金持ちが苦しむ以上に、もっと苦しむことになるだろう。かかる費用のことで貧乏人が思い浮かべる節約は、金持ちが思い浮かべる節約より大きいものなのである。(1..13

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