§7 仮の結論であるが、経済学者は個人の行動について研究する。だが個人の人生に関連してというより、社会に関連づけて研究する。それゆえ個人の気性や性格の特性には、あまり関心をはらわない。経済学者は、すべての階級の人々の行動を注意深く観察する。国中の人々の行動を観察することもあれば、ある地方に住んでいる人々の行動だけを観察することもある。だが特定の商業に従事している人々の行動を観察していることのほうが多い。統計学の助けをかりたり、あるいは他の方法をもちいたりして、経済学者が特定の集団を観察して確かめることがある。その集団が、欲しいものの価格として喜んで支払おうとするお金は、平均でいくらなのかということである。あるいは人々が嫌う努力や禁欲をさせるには、お金をいくらあげなければいけないのかということである。このようにして動機を測定してみても、完璧に正確だというわけではない。それは経済学者が、もっとも進んだ自然化学者として扱われてきたからである。実際は、自然科学者のなかでも一番遅れているといったほうが真実に近いとしても、そのように扱われてこなかったからだ。(1.Ⅱ.30)
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