サキ Saki の長編小説 「耐えがたきバシントン」 2章 11回

ランスロー・チェトロフは飾りのない廊下のはずれに立ち、落ち着かない様子で自分の時計に目をはしらせては、過去に起きた出来事のせいで、自分が三十分でも年上であればと強く願った。だが不幸なことに、そうした出来事は、これからの未来につづくものであり、さらに恐ろしいことに、その未来とは差し迫ったものであった。学校に慣れていない多くの男の子のように、規則と要求に従うことに関して、彼は不健康な情熱に燃えていた。尊敬に値する二、三のことをしようと急いだあまり、おきまり文句以上の掲示板を見ることを怠ってしまい、そのせいで、新入生に特別に参加するように呼びかけたサッカーの練習に参加しそこねてしまった。年下だけれども長く在籍している連中が、彼の過ちから生じる避けがたい結果について、絵を見るようにを教えてくれた。それはまた未知の世界に結びついた不安であり、とにかく迫り来る運命のせいで消し去られていた。そうは言っても、そのとき、意のままの知識に、心配しながら感謝したわけではなかった。

 

 「椅子に座らされて、うしろから鞭で六回ぶたれるんだ」

 「チョークで体に線を一本描かれるんだ」

 「チョークで線を一本、どういうことなの?」

 「本当だよ。同じ場所を鞭でねらえるようにするためだよ。想像以上に痛いんだ」

 

 ランスローが心に灯そうとした希望の青い灯とは、この不快なまでに現実的な描写には、誇張している要素があるかもしれないということだった。

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