サキ 「耐えがたきバシントン」 12回 2章

そうしている間に、廊下の反対側のはずれにある監督生の部屋に、コーマス・バシントンと仲間の監督生が時間どおりに来て座って待っていたが、楽しみを期待する雰囲気がただよっていた。コーマスは、監督生のカーストのなかでは一番下にいる一人だったが、よく知られていないというわけでは決してなく、寮長の談話室の外に出れば、いつもというわけではないが人気もあり、賞賛されて楽しい思いをしたりした。ラグビーをしても、彼は風変わりなところが多々あるため、実際のところ、すばらしい選手にはなれなかったが、相手の選手を地面に吊し上げる行動そのものに、喜びを感じているかのようにタックルしていき、怪我をしたときはかならず、この世のものではないような罵りの言葉をあげるので、その言葉を耳にすることができた運のいい者は、熱心に記憶にその言葉を蓄えようとした。一般的な運動競技で、彼の運動は人目をひくものがあり、監督生の役割には慣れていなかったが、鞭の使い方が巧妙で芸術的であるという評判を確立していた。まさに風変わりな、パガンの名前と似合っていた。その大きな瞳は淡い緑色で、その輝きは永久にきらめくように見え、子鬼がいたずらしているときのようにも、歓楽のよろこびにひたっているときのようにも見え、曲線をえがいた唇は邪悪で、ギリシャ神話の半獣神ファウヌスが笑っているかのようなので、角が生えてきそうで艶やかな黒髪の滑らかさを浸食していくかのように思えた。顎はひきしまっていた。だがハンサムでありながら、短気な印象が相殺して台無しにしてしまい、半ば嘲るような、半ばいらいらした顔をしていた。その不機嫌な性格とともに、コーモスにはどこか創造的で、傲慢なところがあった。運命は気まぐれな魅力を授けてくれたのだが、人生の大きな目的をさしだしてくれてはいなかった。おそらく誰からも愛すべき性格だとは言われたことはなかっただろうが、彼には惚れ惚れするようなところが多くあり、また強く非難すべきところも多くあった。

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