「とにかく彼は正直なひとだわ」彼が自らの不道徳な行為の数々を白状すると、彼女はそう考えた。だが、彼が語ってくれた話を思い出しては、気持ちが落ち込むのだった。その話には、正直さというものが著しく欠けていた。彼の率直な行動から正直さを見つけようとしたけれど、聞こえてくるのはおそらく、善悪に関する慣わしを無視しようとする冷笑だけであった。
「今日の午後は、いちだんと考えにふけっているような顔をしているよ」コーマスは彼女にいった。「まるで君がこの夏の日を発明して、改善しようと考えているみたいだ」
「なにかを改善する力があるなら、あなたから改善していくべきだと思うけど」エレーヌはこたえた。
「僕は今のままの方がいいと確信している」コーマスは抗議した。「君はアーガイルにいる僕の親戚みたいだ。その親戚ときたら、時間を費やしてやっていることと言えば、羊や豚や鶏の品種改良だ。言わば全能の神様にむかって、贔屓をしたり、いらいらしたりするようなものだ、歩き回って、優れた手を万物にさしのべて仕上げをしようとすることは」
エレーヌは賛成しかねるという顔をしたが、直に笑いだし、ついには吐息をちいさく
ついた。
「あなたとまじめに話をするのは簡単ではないわ」彼女は言った。