「そうね、そうした奇妙な言葉でパンフレットをだすなんて、まったく意味のないことよね」マーラは不平をいった。「誰の目にも分かりやすくしようとするなら。そうした言葉にはっきりとした説明をつけようとしても、大切な単語のなかにも、もともとの意味が他にも十五あるくらいだから。閣僚や政治家も、ラテン語やエスペラント語を理解する犬を採用して、演説を届けさせればいいのに。そうすれば次に続く説明を省くことができるのに。でもボンドストリートに戻りましょうね、ボンドストリートから立ち去るのではなく」
「残念だけど、もう立ち去らないといけないわ」フランチェスカは言いながら、グラフトン・ストリートの方にむかった。「さようなら」
「行かなければいけないのかしら?一緒にお茶をしていきましょうよ。邪魔をされないで話しができる、気持ちのいい場所を知っているわ」
フランチェスカは身震いしたいのをこらえ、急用ができたからと告げた。